EU化学物質規制(REACH)と日本の革製品輸出 — Cr(VI)対応の基礎

革製品を欧州に輸出する際、避けて通れないのがEUのREACH規則と、六価クロム(Cr(VI))に関する規制です。2014年施行のRegulation (EU) No 301/2014により、革製品中のCr(VI)は3mg/kg以下に制限されています。規制の仕組みと日本OEM工房の対応を整理します。

EU化学物質規制(REACH)と日本の革製品輸出 — Cr(VI)対応の基礎

革製品を欧州市場に輸出する、あるいは欧州ブランドのOEMを受ける場合、EU化学物質規制への適合は必須条件となります。特に重要なのが、REACH規則と、その附属書XVIIに基づくCr(VI)制限です。

REACHとは

REACH(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)は、2006年にEUで成立した包括的な化学物質規制です[1]。EU域内で製造・輸入される化学物質の登録・評価・認可・制限を義務付けており、消費者製品(革製品を含む)中の化学物質含有量もその対象となります。

REACHの附属書XVII(Annex XVII)は、特定の有害物質の濃度制限を定めており、革製品に特に関連するのが「Cr(VI)の制限」です。

Cr(VI)制限 — Regulation (EU) No 301/2014

2014年施行のRegulation (EU) No 301/2014により、消費者が皮膚接触する可能性のある革製品中の六価クロム(Cr(VI))濃度は、3 mg/kg(3 ppm)以下に制限されました[2]

この規制は、クロムなめし革から経年・紫外線・熱などによって生じる可能性のあるCr(VI)が、皮膚接触アレルギーの原因となることを踏まえ、消費者保護の観点から設定されたものです。

Cr(VI)は革製造時に意図的に使用されるものではなく、通常はクロムなめし工程で使用された三価クロム(Cr(III))が酸化することで生成します。防止には製造工程管理が鍵となります。

Cr(VI)生成を防ぐための対策

  • 抗酸化剤の使用 — 革製造時に抗酸化剤を添加
  • pHコントロール — なめし工程のpH管理を厳密化
  • 保管環境 — 高温・高湿度を避けた保管
  • テスト — ISO 17075に基づくCr(VI)濃度試験

日本のOEM工房としての対応

日本から革製品を欧州に輸出する場合、以下の対応が必要です。

  • LWG認証タンナーなど、化学物質管理が徹底された素材の選定
  • 定期的なCr(VI)濃度試験(国内の第三者試験機関で実施可能)
  • 試験成績書(Certificate of Analysis)の顧客への提出
  • REACH附属書XVIIへの継続的な対応(改正への追随)

その他の注意規制

REACH附属書XVII以外にも、以下の規制が革製品に関係する可能性があります。

  • アゾ染料 — 特定の芳香族アミンを生成する染料は使用禁止
  • ホルムアルデヒド — 一部国では含有濃度に制限
  • フタル酸エステル類 — 子供向け革製品に特に厳格
  • 有機スズ化合物 — 使用制限

詳細は欧州化学物質庁(ECHA)の公式情報を確認することをお勧めします[3]

カリフォルニア州プロポジション65

米国輸出の場合、カリフォルニア州のProposition 65(発がん性物質・生殖毒性物質の表示義務)も関連します[4]。Cr(VI)はProp65の対象物質の一つです。

アイライズ工房の対応

アイライズ工房では、欧米輸出を想定する製品については、規制適合のため化学物質試験レポートの準備もサポート可能です。初期段階からご相談ください。

出典

  1. European Chemicals Agency (ECHA) — REACH RegulationREACH規則の公式情報源
  2. Commission Regulation (EU) No 301/2014 — Chromium VI in leather articlesCr(VI)濃度制限に関する規則原文
  3. ECHA — Restricted substances list (Annex XVII)REACH附属書XVII規制物質一覧
  4. California OEHHA — Proposition 65カリフォルニア州Prop65の対象物質
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