「サステナブルな革を使いたい」というご相談は年々増えています。ただ、環境配慮を自社の言葉だけで語ると、根拠を問われたときに答えに窮します。第三者認証はその弱点を補う手段です。本稿では、国内で利用できる日本エコレザー認定(JEL)を取り上げます。
まず用語の整理 — JESは旧制度、現行はJEL
ここは混乱しやすいので最初に押さえてください。かつて「日本エコレザー基準(JES)」と呼ばれていた制度は、2024年4月に「日本エコレザー認定(JEL)」へ移行しました[1]。
ウェブ上には旧称のJESで解説した記事が今も多く残っています。ブランドの表示物や提案資料で古い名称を使うと、認証まわりの理解を疑われかねません。現行の呼称はJELと覚えておいてください。
運営主体と審査体制
制度を運営するのは一般社団法人 日本皮革産業連合会です。申請された革は、同連合会の企画・研究開発委員会に置かれた日本エコレザー審査分科会が審査します[2]。
つまり、メーカーの自己宣言ではなく、業界団体による第三者審査を経た認定である——これが訴求上の価値の源泉です。
主な認定要件
認定の中心となる要件は以下です[3]。
- 天然皮革であること — 合成皮革・人工皮革は対象外
- 排水・廃棄物処理が適正に管理された工場で製造された革であること
- 有害化学物質について、定められた基準値に適合すること(第三者機関による化学物質検査が必要)
注目すべきは2点目です。製品の成分だけでなく、製造工程の環境管理まで見る設計になっています。革のなめし工程は排水負荷が大きいため、ここを要件に含めている点が制度の実質を担保しています。
申請できる事業者
申請主体は次の事業者に限られます[2]。
- 革製造業者(タンナー)
- 革販売業者
- 革製品製造業者
- 革製品販売業者
革製品の製造業者・販売業者も申請できるため、ブランド側が主体となって申請する道も開かれています。ただし実務上は、革の製造情報と検査用の革を用意する必要があるため、使用するタンナーとの連携が前提になります。
費用 — 2027年3月31日まで申請料が無料
費用構造は「申請料」と「検査費用」に分かれます。
申請料の無料措置は期限付きです。認証取得を検討しているなら、2027年3月末という区切りは意識しておく価値があります。
検査費用の助成制度
実質的な負担の中心は検査費用ですが、これにも助成があります。認定奨励金として、1件の認定につき税抜検査費用の3分の2まで、上限10万円が助成されます[2]。
仮に検査費用が15万円(税抜)だった場合、3分の2は10万円となり上限に達するため、助成額は10万円。自己負担は5万円程度という計算になります。申請料無料期間と合わせれば、初回取得のハードルは想定よりかなり低いと言えます。
審査期間と有効期間
受付は通年ではなく期間が設けられているため、商品の発売時期から逆算するなら、検査手配を含めて半年程度の余裕をみておくのが現実的です。認定情報は日本皮革産業連合会のウェブサイト上で公開されます。
ブランドにとっての意味と、率直な限界
メリットは明確です。第三者の審査を経た認定ラベルは、根拠のある環境訴求を可能にし、近年厳しさを増すグリーンウォッシュ批判への備えにもなります。
一方で限界も正直に書いておきます。JELは国内制度であり、国際的な知名度はLWG(Leather Working Group)などに比べて限定的です。海外市場を主戦場とするなら、JELだけで十分とは言えません。また認定対象は「革」であり、製品全体のサステナビリティを保証するものでもありません。訴求の一要素として位置づけるのが適切です。
アイライズ工房の対応
アイライズ工房では、環境訴求を伴う企画について、認定取得済みの革の調達可否や、取引タンナーとの連携によるJEL申請の進め方をご相談いただけます。「まず認証ありき」ではなく、ブランドの訴求内容と販路に照らして、認証が本当に必要かどうかから一緒に検討します。制度の詳細・最新の受付状況は、日本皮革産業連合会の公式サイトで必ずご確認ください。
出典
- 日本エコレザー認定事業 — 旧制度:日本エコレザー基準(JES)認定についてJESからJELへの制度移行に関する公式説明
- 日本エコレザー認定事業 — 申請申請対象者、申請料、検査費用、助成、審査期間、有効期間
- 東京都立皮革技術センター — 日本エコレザーの主な認定要件天然皮革であること、排水・廃棄物処理の適正管理等
- 日本エコレザー認定事業 — 公式サイト制度全体の一次情報源
