動物由来でない「代替レザー(ヴィーガンレザー、バイオレザー)」は、革製品の未来を語る上で避けて通れないテーマです。しかし実際の商業化は、期待ほどスムーズには進んでいません。主要プロジェクトの現況を整理します。
Mylo — マッシュルーム由来レザー
米国Bolt Threads社が開発したMyloは、マッシュルームの菌糸体(マイセリウム)を培養・乾燥・処理して作る代替レザーです。アディダス、ルルレモン、ステラ・マッカートニー、ケリング等と提携し、実際の製品も複数リリースされました。
しかし、Bolt Threads社は2023年、Myloの商業生産を一時停止することを発表しました[1]。スケールとコストの両立が困難であったとされます。現時点では事業再開の公式見通しは明らかではありません。
Piñatex — パイナップル葉繊維
フィリピン発のAnanas Anam社が開発したPiñatexは、パイナップル収穫後の葉(通常は廃棄される)から繊維を抽出し、不織布にしてコーティング処理した素材です[2]。
ヒューゴ・ボス、H&M、アップルなど複数ブランドと協業実績があり、現在も生産・供給が継続しています。ただし耐水性・経年強度では本革に及ばず、用途は限定的です。
Desserto — サボテン由来
メキシコのAdriano Di Marti社が開発したDessertoは、ノパルサボテン(ウチワサボテン)から作る代替レザーです[3]。
比較的短期間でスケール拡大しており、複数の自動車メーカーやアパレルブランドと協業実績があります。
共通する課題
これら代替レザーが本革を完全に代替するには、いくつかの構造的課題があります。
- 樹脂コーティングへの依存 — 多くの代替レザーはPUまたはPLAでコーティングされており、これ自体の環境影響が存在
- 耐久性 — 本革の数十年単位の耐久性にはまだ達していない
- スケール経済 — 本革のようなマスプロダクションには至っていない
- 修理性 — コーティング剥離等は本革のような「味」にならない
代替レザーは「本革の完全代替」ではなく、「特定用途での本革の補完」として捉えるのが現実的です。ヴィーガン訴求の明確なブランド、短期使用前提のアクセサリなどでは有効な選択肢です。
MIRUM — 樹脂フリーの次世代素材
Natural Fiber Welding社のMIRUMは、植物ゴムや天然油脂を用い、プラスチック・コーティングを使わない代替レザーを目指しています[4]。現時点では生産量・用途は限定的ですが、「本質的にサステナブル」な選択肢として注目されています。
OEM現場での判断
アイライズ工房では、代替レザーを使用した製品のOEMについても柔軟に対応可能です。ただし上記の通り、素材特性により適用製品は限定的となるため、ブランド様の用途・訴求軸を踏まえた上で素材提案を行います。
出典
- Bolt Threads — Mylo Business Update (2023)Mylo商業生産停止に関する公式発表および業界報道
- Ananas Anam (Piñatex) 公式サイトPiñatexの製造プロセスとパートナーブランド
- Desserto — Adriano Di Marti 公式サイトサボテンレザーの開発・供給情報
- Natural Fiber Welding (MIRUM)MIRUMの技術的特徴
