ラグジュアリー業界では、2010年代以降、革素材の安定確保を目的としたサプライチェーンの垂直統合が進んでいます。革小物やレザーバッグのOEM製作を検討する際、「なぜ自社で良質な革を調達するのが年々難しくなっているのか」を理解するためには、この業界動向を押さえておく必要があります。
LVMHグループのタンナー保有
LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ ヘネシー)は、革素材の安定確保のため複数のタンナーを傘下に置いています。代表的なものとして、シンガポールのHeng Long International(エキゾチックレザー)、フランスのTanneries Roux、Tanneries Masureなどが知られます[1]。
これらの買収は、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオール、フェンディといったグループブランドへの革供給を安定化させる目的を持っています。
ケリング(Kering)のサステナブル×垂直統合
グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタを擁するケリングも、複数のタンナーを保有しています。France Croco(クロコダイル皮革)、Normandy Tannery Caviar of Desaなどが知られ、同社は特に「サステナブル調達」を戦略軸として打ち出しています[2]。
ケリングの環境損益計算書(Environmental P&L)は、革素材が同社の環境インパクトの大きな割合を占めることを公表しており、タンナーの内製化は「トレーサビリティと環境対応の両立」にもつながっています。
シャネルの独自路線
シャネル(Chanel)は上場企業ではないため詳細の開示は限定的ですが、同社がフランスのタンナーBodin Joyeuxなどを取得していることは業界紙で広く報じられています[3]。また、刺繍工房Lesageや金工房Goossensなど、装飾・職人系工房の保有(Paraffectionグループ)でも知られます。
ラグジュアリー各社の垂直統合は「サステナビリティ対応」「差別化素材の確保」「供給リスクの分散」という3つの要因で進んでいます。
中小ブランド・OEM工房への影響
ラグジュアリー各社がタンナーを内製化する流れは、中小ブランドにとっては「良質な革の入手競争が激化する」ことを意味します。特にフランス・イタリアの高品質タンナーからの調達枠は年々締まっており、新規取引の敷居は上がっています。
日本の革製品OEMでは、国内タンナー(栃木レザー、姫路・たつの)や、信頼できる欧州タンナーとのルートを確保している工房の価値が相対的に高まっています。
今後の展望
- Made in Japanの国産革は「地政学的リスクの低い供給源」としてグローバルに再評価
- 中小ブランドは「タンナーとの直接関係」が差別化に直結
- OEM工房には「素材提案力」が従来以上に求められる
アイライズ工房では、国内外の複数タンナーとのパートナー関係を維持し、ブランド様の要件に応じた素材提案を行っています。
出典
- LVMH — Annual Report / Universal Registration Document子会社リスト(タンナーを含む)
- Kering — Environmental P&L / Sustainability Reports革素材の環境影響、タンナー保有状況
- Business of Fashion / WWD 報道シャネルの工房買収に関する業界紙記事
- Chanel — Société Anonyme Annual Accounts (UK filings)英国法人の公開決算
