D2C(自社EC直販)が主流の時代でも、セレクトショップ・百貨店への卸売は革ブランドの売上拡大に欠かせない販路です。ブランド露出・新規顧客接点・ブランド権威性の獲得という、自社チャネルだけでは得られない価値があります。本記事では革ブランドが卸売を始める際の実務を整理します。
なぜ卸売を検討すべきか
- 新規顧客接点の拡大:店頭で実物を見て買う層にリーチ
- ブランド露出:「あの有名セレクトショップに置かれている」という権威性
- キャッシュフロー安定:まとまった発注で売上が読める
- 地域展開:自社拠点のない地域への露出
- ECに来ない層を獲得:「店頭派」の取り込み
卸売の基本構造 — 掛け率(卸価格)
卸売では「上代の何%で卸すか」を協議します。革製品の業界目安は以下:
- 掛け率 50%〜60%:上代1万円なら卸価格5,000〜6,000円
- 掛け率 40%〜50%:百貨店・大手バイヤーへの卸(厳しめ)
- 掛け率 60%〜70%:小規模セレクトショップ(ブランド力次第)
掛け率 50% は「店舗が売値の50%を取る」という意味。製造原価率が30%なら、卸価格5,000円のうち原価3,000円、利益2,000円という構造になります(参考:革製品OEMの費用相場、革ブランドの価格設定)。
取引形態 — 買取 vs 委託 vs 消化仕入
| 形態 | 仕組み | ブランド側のリスク |
|---|---|---|
| 買取 | 店舗が一括買い取り、返品不可 | 低(売上確定) |
| 委託 | 店舗に置き、売れた分だけ精算、未売は返品 | 高(在庫リスク負担) |
| 消化仕入 | 売れた瞬間に仕入計上、未売は無償返品 | 高(売れ残り全額負担) |
ブランド側は買取が理想、店舗側は委託・消化仕入が安全と利害が対立します。ブランド力と交渉力で決まります。
卸先を見つける3つの方法
- ① 展示会出展:JAPANTEX・ギフトショー・国際ファッションフェア等のBtoB展示会で直接バイヤーと接触
- ② BtoBプラットフォーム:スーパーデリバリー、orosy、TOPANGA等で自社製品を登録
- ③ 直接アプローチ:気になるセレクトショップに直接サンプル送付+提案メール
バイヤーが見ているポイント
セレクトショップのバイヤーが新規ブランド導入時に見るのは:
- ブランドストーリー・世界観:店舗の世界観と合うか
- 商品の独自性:他店との差別化要素
- 価格帯:店舗の顧客単価と合致するか
- SNSフォロワー数・実績:プロモーション資産
- 納期の安定性:受注後すぐ納品できるか
- アフター対応:不良品・修理時の対応速度(参考:アフターサービス設計、保証書設計)
取引契約で必ず確認すべき事項
- 掛け率:上代の何%
- 支払条件:月末締め翌月末払い等
- 最低発注ロット:1回あたりの最小数量
- 返品条件:可否・期間・状態
- 価格安定義務:「他店より安く卸さない」等の取り決め
- 独占性:エリア・販路の独占権の有無
- 納期:発注からの納品リードタイム
- 不良品対応:交換・返金の手続き
卸売開始前に整えておくべき4つの準備
- ① ラインシート:商品一覧、上代・卸価格・スペック・写真をまとめた営業資料(A4 1〜数ページ)
- ② サンプル品の用意:バイヤーに送付・店頭展示用
- ③ ブランドプロファイル:1ページのブランド紹介資料
- ④ 配送・梱包体制:B2B発送に対応できる体制(参考:梱包・パッケージング)
卸売のリスクと注意点
- ブランド世界観の希薄化:合わない店舗に置かれると顧客の印象が変わる
- 価格コントロールの喪失:店頭でのセール頻発で値崩れ
- 在庫リスク(委託の場合):売れ残りが大量返品される
- EC直販との競合:同じ商品が複数チャネルで価格差を持つ可能性
これらを避けるため、取引先を厳選する+契約で価格と取り扱い条件を明文化することが重要です。
よくある質問
Q. 立ち上げ間もないブランドでも卸売できますか?
A. ブランド力と商品力次第です。最初は小規模セレクトショップから始めるのが現実的。大手百貨店は実績重視のため、まず実績を積んでから挑戦する流れになります。
Q. 卸価格と自社EC価格、どう差別化すべき?
A. 基本は同価格で卸先を尊重しつつ、自社ECでは限定色・限定モデルを投入することで差別化するのが定石です。
アイライズ工房の卸売対応
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