革製品の設計で見落とされがちですが、極めて重要なのが「革の厚み」です。同じデザインでも、厚みが0.2mm違うだけで、コシ・耐久性・高級感がまるで変わります。本記事では、厚みの読み方と調整技術である漉き加工を解説します。
オンス(oz)とミリ(mm)の換算
革の厚みは「mm」または「oz(オンス)」で表されます。換算の目安は1 oz ≒ 約0.4mmです[1]。たとえば「4〜5oz」は約1.6〜2.0mmを意味します。海外素材ではoz表記が多いため、換算を理解しておくと仕様伝達がスムーズです。
用途別・厚みの目安
- 0.6〜1.0mm:財布の内装、ライニング、柔らかい小物
- 1.2〜1.5mm:カードケース、しっかりした小物
- 1.5〜2.0mm:バッグ本体、ベルト、コシが欲しい部位
- 2.0mm以上:ヘビーデューティーなベルト・ペット用品など
原皮は「部位でばらつく」
1枚の原皮でも、背中(ベンズ)は繊維が詰まって厚く強く、腹(ベリー)は薄く伸びやすいなど、部位で厚みと質が異なります。1.0〜5.0mmの幅があるため、製品では漉き加工で目標厚に揃えるのが品質安定の基本です[2]。
漉き(すき)加工とは
漉き加工(スプリッティング)は、バンドナイフマシンで革を水平にスライスし、厚みを調整する工程です[2]。全体を均一に薄くする「ベタ漉き」、縁だけを薄くする「縁漉き(へり漉き)」、段差をつける「段漉き」などがあり、折り返しや縫い合わせを美しく仕上げるために不可欠です。
縁を漉かずに折り返すと、コバが分厚くなり野暮ったい仕上がりに。高級感のある薄く美しいエッジは、漉き加工の精度から生まれます。
漉きの種類を使い分ける
漉き加工は目的に応じて使い分けます。
- ベタ漉き:革全体を均一な厚みに。複数枚の厚みを揃えるときに
- 縁漉き(へり漉き):縁だけを薄く。折り返し(ヘリ返し)を美しくする基本
- 段漉き:縫い合わせ部に段差をつけ、重ねても厚くならないようにする
- 斜め漉き:角度をつけて漉き、自然な折り返しを作る
これらを適切に組み合わせることで、見た目の薄さと必要な強度を両立できます。
厚みと「コシ」「重量」の関係
厚みは強度だけでなく、製品のコシ(ハリ)と重量感も決めます。同じデザインでも、厚い革は自立する構築的な印象に、薄い革は柔らかくしなやかな印象になります。バッグなら「自立させたいか、くたっとさせたいか」で厚みの方向性が変わります。また厚みは重量に直結するため、大型バッグでは「強度は欲しいが重すぎは避けたい」というトレードオフを、部位ごとの厚み設計で調整します。
厚い革=高級、ではありません。薄く漉いて軽やかに仕上げる技術こそ、職人の腕の見せどころです。
よくある質問
Q. 「4〜5oz」と言われても厚みがピンときません。
A. 1oz≒0.4mmなので、4〜5ozは約1.6〜2.0mmです。バッグ本体やベルトに使われる、しっかりコシのある厚みです。
Q. 既製の革の厚みを後から変えられますか?
A. 漉き加工で薄くすることは可能ですが、厚くはできません。設計段階で目標厚を決め、必要な部位だけ漉いて調整するのが基本です。
設計段階で厚みを決める
厚みは「後から変える」のが難しい設計要素です。サンプル段階で複数の厚みを試し、最適解を見つけることをおすすめします。アイライズ工房では、用途に応じた革厚の選定と漉き設計からご提案します。
出典
- レザークラフトの単位比較表 — ilovesmartoz↔mm換算の目安
- 革を漉く(すく)こと、厚みのことについて — CIRCLE OF CIRCUS部位による厚みのばらつきと漉き加工の解説
