「コバ」は革製品の断面、すなわち革の繊維がむき出しになる部分のことです。革製品の品質を見るとき、コバの仕上がりは熟練度を測る重要な指標とされます。本記事ではコバ磨きの工程と、それぞれの仕上げ剤の特徴を解説します。
コバ磨きとは何か
裁断直後の革の切断面は、繊維がほつれた状態です。これをそのままにすると、製品の使用過程でほつれが進行し、見た目が悪化します。コバ磨きは、繊維を圧縮・接着し、断面を平滑化する仕上げ工程です[1]。
基本的な工程
- 面取り(Beveling) — エッジビベラーで角を斜めに削る
- 水で湿らせる — 革繊維を膨潤させる
- 磨き — 木製のバーニッシャー(スリッカー)で擦って繊維を圧縮
- 仕上げ剤を塗布 — トコノール/CMC/蜜蝋等
- 再度磨き — 表面を平滑化
- 染色(必要に応じて) — エッジペイントで色味を整える
仕上げ剤の使い分け
トコノール(東京月星)
日本の老舗が開発した水性仕上げ剤。透明〜半透明で革の自然な色味を保ったまま光沢を出せる。革小物・ハンドメイドで広く愛用[2]。
CMC(カルボキシメチルセルロース)
植物由来の水溶性ポリマー。高い粘度で革繊維を強くコーティング。長期使用での耐久性が高い。
蜜蝋(ビーズワックス)
天然のワックス。革の色を深めながら撥水性を付加。仕上げ剤の最終層として使うのが定番。
エッジペイント(樹脂塗料)
合成樹脂ベースで、強い色味と均一性を提供。ラグジュアリー革製品の量産で標準的に使用[3]。
磨きの回数と仕上がりの関係
当工房では同じ革に対し3〜10回程度の磨きを重ねます。回数が増えるほど繊維が圧縮され、表面が鏡面に近づきます。一般的には5〜7回で実用的な仕上がり、10回以上で「ガラス状」になります。
高級レザーブランドのコバ仕上げ
ハイエンドレザーブランドの代表例として、エルメスのコバ仕上げは樹脂ベースのエッジペイントを多層に塗り重ねる技法で知られます。1個のバッグのコバ仕上げに数時間かけることもあるとされます[4]。
アイライズ工房の対応
当工房ではブランド様のコンセプト・予算に合わせて、トコノール仕上げから多層エッジペイントまで対応しています。サンプル時に複数の仕上げ方法を比較できるよう提供できます。
出典
- Tandy Leather — Edge Finishing Guide革工芸ブランドの技術ガイド
- 東京月星 (TOKONOLE)日本の革仕上げ剤メーカー
- Fenice — Italian Edge Paint Manufacturerイタリアのエッジペイント業界標準
- Hermès The Inside Story — Documentary業界報道とエルメス公式IR
